2026年12月の本格施行を控え、こども性暴力防止法に基づく「犯罪事実確認」の具体的な手続フローが明らかになってきました。
この手続は、学校や保育所、学習塾など子どもと接する事業に従事する人が、過去に特定の性犯罪を犯していないかを確認するためのものです。重要なのは、これが単なる事業者側の一方的なチェックではなく、事業者と従事者が「こども性暴力防止法関連システム」を通じて共同で進めるオンラインプロセスだという点です。
本記事では、この犯罪事実確認の具体的な手続フローを、事業者と従事者それぞれの視点から詳しく解説します。
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1. 犯罪事実確認とは:基本の理解
システムを通じたオンライン手続が原則
犯罪事実確認の交付申請から受領・確認に至るまでの手続は、原則として「こども性暴力防止法関連システム」を通じてオンラインで行うことが求められています。これは事業者だけでなく、従事者(申請従事者)が行う手続も含まれます。
つまり、書類のやり取りではなく、事業者と従事者がそれぞれシステムにアクセスし、必要な情報を登録・確認していく形で手続が進行します。
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2. 標準的な手続フロー:特定性犯罪歴がない場合
まずは、最も一般的なケースである「特定性犯罪歴がない場合」の手続フローを、事業者と従事者の役割に分けて見ていきましょう。
- STEP 1事業者アカウント登録GビズIDを取得し、登録を行います。
- STEP 2従事者リスト登録対象者のメアドを登録し、メールを送ります。
- STEP 3従事者が入力届いたメールから本人が登録します。
- STEP 4戸籍情報等の連携マイナンバーカード等を使い、本人が戸籍情報をシステムに連携(提出)します。
- STEP 5【ここから事業者】交付申請従事者の登録完了を確認後、事業者がシステム上で交付申請ボタンを押します。
- STEP 6犯罪事実確認書の受領問題がなければ確認書がデジタル発行されるので、内容を確認・保管します。
3. 特定性犯罪歴が確認された場合:3つの分岐フロー
- 🔽 :訂正も中止もしない場合(標準)
- (解説:そのまま事業者に通知されます)
- 🔽 :誤りがあるため「訂正請求」する場合
- (解説:こども家庭庁へ申し立てを行います)
- 🔽 :知られたくないため「中止要請」する場合
- (解説:自ら辞退することで、事業への通知を防ぎます)
🛑 「中止要請」とは何か?
過去の犯罪歴を事業者に知られたくない場合、従事者は自ら手続きを中止できます。 これにより、事業者に「犯罪事実確認書」は交付されません(=前科はバレません)。 ただし、確認書が出ない以上、その業務に就くことはできなくなるため、結果として「辞退・退職」を選択することになります。
法務省への照会により特定性犯罪歴が確認された場合、手続は大きく変わります。
最も重要なのは、犯罪事実確認書が事業者に交付される前に、従事者本人に記載内容が事前通知されるという点です。これは、従事者のプライバシーを保護し、誤った情報に基づく不利益を防ぐための措置です。
この通知を受けて、従事者は以下の3つの選択肢から対応を選ぶことができます。
4. 外国籍従事者への特別な配慮
外国籍の従事者については、いくつかの特別な配慮が必要です。
⏳ 期間: 日本人より長く、約1ヶ月かかります。
📄 書類: マイナカードだけでなく、在留カードや来日履歴が必要です。
✈️ タイミング: 可能な限り**「来日前(出国前)」**の手続きが推奨されます。
5. 事業者・従事者それぞれの留意点
事業者の留意点
システム準備は早めに
法施行前にアカウント登録や担当者の権限設定を済ませておくことで、スムーズな手続が可能になります。
従事者への丁寧な説明
この手続は従事者本人の協力が不可欠です。なぜこの確認が必要なのか、どのような手続が必要なのかを丁寧に説明し、理解と協力を得ることが重要です。
情報管理の徹底
犯罪事実確認書には極めて機微な個人情報が含まれます。厳格な情報管理が法的にも求められています。
外国籍従事者への配慮
手続期間の長さを見込んだ採用計画と、丁寧なサポートが必要です。
従事者の留意点
迅速な対応
事業者からメールが届いたら、速やかにアカウント登録と情報登録を行うことで、採用プロセス全体がスムーズに進みます。
正確な情報入力
戸籍情報等は正確に入力する必要があります。誤った情報により照合に時間がかかる可能性があります。
事前通知への対応
万が一、特定性犯罪歴ありの通知を受けた場合、2週間という限られた期間内に訂正請求や中止要請の判断をする必要があります。誤った情報だと思う場合は速やかに訂正請求を行いましょう。
マイナンバーカードの準備
日本国籍の場合、マイナンバーカードがあれば戸籍情報の電子提出が可能で、手続が大幅に簡略化されます。
6. この手続が持つ意義
この犯罪事実確認の手続は、単なる事務手続ではありません。子どもたちを性暴力から守るための、極めて重要な防止措置です。
子どもの安全を守る
過去に特定の性犯罪を犯した人が、再び子どもと接する環境に入ることを防ぐことで、子どもたちの安全を守ります。
従事者の権利を守る
一方で、従事者のプライバシーや権利も適切に保護される仕組みになっています。事前通知、訂正請求の機会、中止要請の選択肢など、従事者の立場にも配慮された設計です。
透明性と公平性
オンラインシステムを通じた標準化された手続により、すべての事業者・従事者に対して透明で公平な確認プロセスが提供されます。
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おわりに
こども性暴力防止法に基づく犯罪事実確認は、2025年6月の本格施行に向けて、すべての対象事業者が準備すべき重要な手続です。
この手続は、事業者と従事者が「こども性暴力防止法関連システム」を通じて共同で進めるプロセスであり、双方の理解と協力が不可欠です。
事業者の皆様へ
システムへの早期登録、従事者への丁寧な説明、情報管理体制の整備を進めてください。特に外国籍従事者の採用を予定している場合は、余裕を持ったスケジュールを組むことをお勧めします。
従事者の皆様へ
この確認は、子どもたちの安全を守るための重要な措置です。事業者からの依頼には速やかに対応し、正確な情報を登録してください。
子どもたちが安心して学び、成長できる環境を作るために、私たち一人一人ができることから始めましょう。
- Q従事者がスマホやパソコンを持っていない場合はどうすればいいですか?
- A
事業者の端末を貸与して入力してもらうか、本人の同意を得て事業者が補助を行うなどの対応が必要です。ただし、パスワード設定や本人確認(マイナカード読み取り等)は必ず本人が行う必要があります。
- Q「いとま特例(急な欠員)」を使うと、確認なしで働かせてもいいのですか?
- A
あくまで「確認結果が出るまでの暫定的な措置」です。特例を使う場合でも、システムへの登録と申請は必須であり、後日結果が出次第、速やかに確認する必要があります。確認の結果「犯罪歴あり」だった場合は、直ちに業務から外さなければなりません。
- Q犯罪事実確認書はずっと保管しておく必要がありますか?
- A
はい、法律上、適切な管理と保管が求められます。ただし、退職などで確認の必要がなくなった場合は、速やかに廃棄・削除する必要があります。個人情報保護の観点から、鍵のかかるキャビネットやアクセス制限のあるフォルダでの厳重管理が必要です。
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※本記事の内容は、2025年10月時点の情報に基づいています。詳細な手続や最新情報については、こども家庭庁が公表するガイドラインやマニュアルを必ずご確認ください。
